「クルマ」の未来 静岡トヨタ自動車株式会社 「クルマ」の未来

静岡トヨタ自動車株式会社の皆様にお話を聞きにいきました。
インタビューを通じて、ガソリン車からのシフト、自動運転の広がりなど、「クルマと人の関わり方」が大きく変化する未来が見えてきました。

インタビュー先紹介

静岡トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車と販売店契約を結び、静岡で自動車販売を行う企業。
SDGs宣言を行い、自動車による環境負荷の軽減も目指しています。
>静岡トヨタ自動車株式会社

●インタビューに答えて下さったのは…
・川田稔也さん(経営企画部 経営企画課)
・大石恭央さん(総務人事部 総務課)
・有馬英司さん(総務人事部 人事課)

●学生インタビュアー
静岡県立浜松城北工業高等学校2年生~3年生の7名


インタビュー

 
今乗っている車はハイブリッドカーですか。


(大石さん)
私は今C-HRというハイブリッドカーに乗っています。前はガソリン車に乗っていましたが、通勤距離が長いので、より燃費のいい車にしたくて乗り始めました。

(川田さん)
私も同じC-HRというハイブリッドカーに乗っています。私も通勤距離が長く、だいたい1日70㎞くらい乗ります。

(有馬さん)
私は、2人と違って家が近いんですが、ハイブリッドカーに乗っています。家族を乗せるため、エスティマのハイブリッドという人がたくさん乗れるタイプの車です。2人目の娘が生まれた時に、家族で色々な所へ出かけたいと思い、燃費のいい車に乗り換えました。

 
ありがとうございます。やっぱり燃費の良さがハイブリッドカーの魅力であることがよく分かりました。



 
皆さん、ハイブリッドカーに乗られている、ということですが、自動車を販売されている中で、実際に電動車の売り上げはどのくらいのびていると感じていますか?


(川田さん)
お客様からご注文を受ける中で、約半分弱くらいがMIRAIやハイブリッドカーなどの電動車という感じです。ただ、現状、商用車では電動車に対応していない車種もあるので、法人より一般のお客様の乗られる車ではかなり増えています。

 
身近な車に乗る人に聞くと、燃費は気にしても、環境についてはあまり気にしていない人が多い気がします。実際にお客さんで環境を気にして車を選ぶ人はどのくらいいますか?


(大石さん)
環境を気にしてというより、やはり燃費を気にする方が多いかなと思います。私もハイブリッドカーに乗って感じますが、ガソリンスタンドに行く回数がすごく減ります。
また、お客様の中にもいろいろなニーズがあります。例えば、お子さんが生まれて大きい車にしたいけど、ハイブリッドカーだと少し高いのでガソリン車でワンボックスの車を選ぶとかですね。なので、一概に環境のことだけを考えて車を購入する人は少ないと思います。
ただ、会社を経営されている方や社用車などでは、環境に配慮しているという企業イメージも大切なので、それを基準に車が選ばれることが多くなっているかなと思います。

 
現状で、電動車に乗っている人はどのくらいいますか。2035年には、ガソリン車の新車販売がなくなると聞いたので、そこに向けて、現状はどのくらいなのか、あとどのくらいの道のりなのか知りたいです。


(有馬さん)
日本全体では、2021年のデータでは、乗用車のうち電動車の割合は44.7%というところまで来ています。2030年にはこれが9割になる予測なので、10台に9台が電動車になるという見込みですね。

 
個人的な興味なんですが、実際に車を販売されていて、1番売れるなと思った車の要素は何ですか?価格や燃費、デザイン、話題性など。


(有馬さん)
私は10年くらい営業を担当していました。アクアというハイブリッドカーは知っていますか?プリウスよりも少し小さい車です。
ハイブリッド、コンパクトカー、燃費がいいというキーワードが重なり、私の営業経験10年の中では、1番納期に時間がかかったり、注文が殺到したりしたなと思います。

 
電気自動車と水素自動車、どちらが環境にやさしいと思いますか?


(川田さん)
これは色々な見方があると思いますが、車を作る時から廃車にする時までのライフサイクル全体で見ると、やはり今の日本では火力発電がメインなので、一番合っているのはハイブリッド車だと言う意見もあります。
電気自動車を作る時や、普段の充電の時に火力発電で作られた電気が使われるためです。環境面では水素の方がおそらくいいだろうと思います。
ただ、今は太陽光発電など、再生可能エネルギーの電力も増えてきていますよね。二酸化炭素が発生しにくい電力で賄えるようになってきたら、電気自動車がやっぱりいいということになるかもしれません。
ヨーロッパの国々など、火力発電の少ない国もあります。その国それぞれの環境にあったものがあるのだと思います。トヨタのCMの中で豊田社長が「EV(電気)も本気、燃料電池(水素)も本気」と、色々な選択肢を提供すると言っているように、いろんな要素、可能性を考えて、今車を作っている状況なのだと思います。

(有馬さん)
ハイブリッドなのか、電気なのか、水素なのかという車の種類に加えて、お客様それぞれの車の使い方にもよって変わってくるところがあると思います。
車を購入した後、すごく乗る人もいれば、毎日少しの時間だけ乗る人もいます。そういうところは、トヨタ自動車が作る車から、私たちがお客様にあったものを提案して行くということを今後もしっかり考えていきたいと思います。

 
電気自動車の普及にあたって、充電スポットや環境面など今後課題となることはありますか?


(大石さん)
例えば充電ステーションをはじめとしたインフラ整備では、ガソリン車と違って充電にある程度の時間が必要なので、その間車を停められるように、ある程度の広さが必要になります。
また、車を作るための電気を火力で発電するとCO₂が増えてしまうといった問題もあるので、それらのことは社会全体で考えていかなければならない課題だと思います。

 
自動車販売店に充電設備を設けることについてどう思いますか?


(川田さん)
電気自動車の普及にあたり、インフラ整備として急速充電できる場所が必要になってきます。当社でも、現在計画している新店舗には急速充電器を設置する予定です。また、G₋stationといわれる普通充電器も現在ほとんどの店舗についています。ただ、電気自動車の普通充電にはかなり時間がかかってしまうので、今後急速充電器の設置を進めていく予定です。

 
電動車の時代になると、車づくりの業界では、なくなってしまう仕事や部署などはあるのでしょうか。
こちらは自動車の製造ではなく、販売をされる会社さんですが、もし個人的に予想されることなどがあれば伺いたいです。


川田さん)
ガソリン車では1台につき2~3万点の部品が使われています。それが電気自動車に代わってくると、今ある部品とは違うものが必要になったり、今の部品が使われなくなったり、ということは正直あるのかなと思います。
ただ一方で、例えば、AIによる自動運転のテストやIT関係の導入なども行われています。
トヨタでもT-Connectという「つながる」をメインにしたサービスを展開しています。そんな風に、色々な「今はない仕事」が今度は出てくると思います。
当社のような販売会社で言えば、例えばテスラなどではインターネットで車を販売していたりします。そうなってくると将来的に営業スタッフが減るということはあるかもしれません。当社の場合は、現在お客様とのつながりの中で車を購入していただいているので、そういう仕事がまるまるなくなるという予定は現状ありません。
エンジニアの仕事でも、今は直接車を見て修理などを行いますが、将来的には遠隔でコンピュータを使ってソフトを書き換えるだけで車を修理できる時代がくるかもしれません。

 
トヨタ自動車の電動車には他社に比べてどんな強みがありますか。


(大石さん)
まず、トヨタ自動車の販売している車種は、ハイブリッドカーも含めてラインナップが豊富で、お客様が色々なニーズに合わせて選びやすいです。
店舗も全国にたくさんあるので、例えば県外で車の修理が必要になった時も安心です。また、さっきお話に出た電動車のインフラである充電設備についても、トヨタの店舗に今後どんどん設置されていけば、出先で充電が必要になった時も安心です。そういったことは強みかなと思います。

 
自動運転の普及について、どう思いますか?


(大石さん)
自動運転が普及するにあたって、事故を起こしたときにだれの責任になるのか、という法の整備が一番はじめに問題になるのではないかと思います。
一方、車同士が通信することで、事故を防いだり、物の輸送の仕方が変わったり、
車の中で勉強や仕事など、運転以外のことができるようになったり、身体の不自由な方や、高齢者、免許を持っていない方も車を使って活動範囲が広がったりするのではないかと車業界の中では言われています。

(有馬さん)
さきほど、2人は通勤時間が長いという話が出ましたが、自動運転によってその分の自由な時間が生まれますよね。販売会社としては自動運転の車の販売を通して、お客様に新しい生活のスタイルが提案できるかもしれません。お客様のことをよく知って、「その時間、こんなことができますよ」という提案ができるようにしていきたいなと思います。


僕は、完全な自動運転になると事故の時に車の製造会社が責任をとることになるので、あくまで自動運転は運転手のサポートにとどまるのではないかと思いますが、どう思いますか?


(大石さん)
将来どうなっていくかはわかりませんが、できれば完全に自動運転になって、人の過失の割合が減り、事故が減ればいいなと思います。そのためには、自分の車だけではなく、ほかの車も含めたすべての車が自動運転になることが必要かなと思います。

(川田さん)
現状、トヨタ自動車が作っている自動運転の車も、運転手のサポートという機能です。例えば自動ブレーキがかかった時に運転手が別の操作をすれば、運転手の意思が尊重されるようになっています。
一方、大石の言ったように事故がない車を実現したいという思いもあります。
今も車同士で通信して「こっちから車がくるぞ」と分かるようになっている車もありますが、その機能がついていない車とはもちろん通信できないので、事故のない社会のためには、完全自動運転の車が普及していけばいいなと、個人としては考えています。

 
この場がすでに環境、SDGsに関係した活動ですが、この他にも環境やSDGsに関連する活動をされていますか。


(大石さん)
今回のインタビュー事業では静岡トヨタのハイブリッド基金を活用していただいています。当社は、ハイブリッドカーのプリウスが25年ほど前に発売された時、全国的に最も早く販売を開始したディーラーです。その売り上げをもとに何か環境に配慮した活動ができないか考え、ハイブリッドカーやMIRAIなどの環境車を購入していただいた売り上げの1部を積み立て、助成金として県内の様々な活動をお手伝いするハイブリッド基金を始めました。
他にも全店舗に専門スタッフを配置して福祉車両の販売のお手伝いをするなどの活動もしています。

(川田さん)
社内SDGsプロジェクトを発足しています。全部で9名のプロジェクトメンバーがいます。
昨年度はまず全社員に「SDGsってなに?」ということを知ってもらう勉強会を行いました。当社のHPにものっていますが、営業スタッフやエンジニアなど、当社のそれぞれの仕事もSDGsにつながっている、ということをベースにした内容にしました。その中で、個人として、店舗として、また会社としてこれから挑戦してみたいことのアンケートをとりました。
来年度は店舗ごとに色々な取り組みを進めていきます。取り組む内容は宣言という形でポスターを作成し、ショールームにも展示する予定です。

 
最後に、2050年はどうなっていると思いますか?


(静岡トヨタ自動車株式会社のみなさま)

「CS、ES日本一」
(有馬さん)
もっと静岡県の人とつながり、信頼されている、そういう会社になっていると思います。というのも、さっき「なくなる仕事」の話がありましたが、インターネットで車を購入するような時代になると、ただ販売だけをしている会社なら、たぶん、なくなっちゃうと思います。
今もそうですが、私たちの仕事は車をただ売るだけではありません。皆さんのおうちの方も車に乗って通勤などされていると思います。車の先には生活がありますよね。その生活がもっと豊かになるような提案をさせていただいています。
そのために、お客様の立場で、私たちにどんなことができるかを日々考えていく必要があります。こういったことをもっともっと続けていけば、2050年には、今よりもっと静岡県の人に愛されている会社になれているのではないかと思います。
CSとESという言葉、聞いたことありますか?
CSというのは「Customer satisfaction」でお客様満足度のことです。
それに対してES(Employee Satisfaction)は社員の満足度です。
静岡トヨタは2050年には、お客様の満足度も日本一、静岡トヨタで働く社員の満足度も日本一の会社を実現したいと思います。なぜCSとESかというと、私たちは、メーカーとは違って、ものづくりの会社ではありません。さっきもお客様との信頼関係という話をしましたけど、私たちは人と人との関係を大事にすることがすべての会社なので、社員が満足して生き生きと働くことで、お客様の満足度も上がっていく、そういう流れを目指しています。

インタビュー

●2050年にはハイブリッドカーや電気自動車が80%以上を占めるようになってほしいです。
●2050年はバスやタクシーなどの交通機関やトラック等の大型車を含め車社会全体に自動運転が導入されていて、人や物の運搬が多くなると思います。
●2050年には映画のように空を飛ぶ車が開発または普及されていてほしいです。
●高速道路や整備された道路では完全に自動運転になっていると思います。
●高速道路などですれ違った人はもうみんな誰もハンドルを触ってない状況になっていて、物をトラックにはもう人が乗っていないと思います。
●自動運転が普及し、事故が年間で片手で数えられるぐらい少なくなっていると思います。
●「老若男女問わず、生活中の移動を快適に」。なんか標語みたいになりましたが、自動運転によって、お年寄りかどうかとか性別とか、ドライバーかどうかも関係なく、全員がその移動中の時間を安全に快適に過ごせるようになっていると思います。
●環境に配慮した車が普及して、ガソリン車が逆に珍しいぐらいの時代になっていると思います。これからの私の環境活動の目標でもありますが、最終的には、皆さんが環境を意識せずに、ただ生活しているだけでも環境に配慮できている社会の仕組みができていたらいいなと思います。



おまけ

インタビュー後、静岡トヨタ自動車の皆様のご厚意で、水素自動車「MIRAI」を見せていただきました!

エンジニアの方から車の仕組みやガソリン車と違う部分などについて説明を受け、食い入るように聞く学生たち。

ボンネット内部のモーターや車体の裏側まで見せていただいて大興奮!学生いわく、「これで興奮しない工業高生はいませんよ!!」とのこと。

その後、社員の方の運転でMIRAIに乗り、敷地内を一周していただきました。
学生たちは水素自動車の仕組みに加え、見た目のカッコよさや、乗り心地の良さにも魅了されていました。
将来、学生たちが自分で車を運転する頃にはこんな自動車がもっと増えているかもしれません。


※インタビューの内容、参加者の所属は2022年3月29日当時のものです。
※この事業は2021年度、ふじのくに未来財団を通じ、静岡トヨタ自動車株式会社の「ハイブリッド基金」の助成を受けて実施しました。

ふじのくに未来財団